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35mmフィルムさん、ありがとう

「リコーが今年度中にフィルムカメラ事業から撤退することが20日、分かった。デジタルカメラ市場急成長の影で、フィルムカメラ事業は赤字が続いていた。すでに開発や生産は中止しており、現行機種の販売を終え次第、撤退する。 (時事通信)」

 とのことです。
 リコーといえば、コンパクトカメラでは数年前まで人気メーカーの一つでしたし、かつては一眼レフも発売していて、先端ビジネス機器のメーカーであり、カメラもプッシュスイッチや液晶表示を多用したハイテクっぽいイメージでしたので、中学・高校の写真部部員や一眼レフ入門者に人気のブランドでした。

 ところで、私はもともと30年近く前から趣味で写真をやっていたこともあり、まわりの人間からは「それだけPCを使っているのに、なんで写真はフィルムにこだわるの?」と不思議がられるほどのフィルムカメラ派だったのですが、最近は超広角あるいは超望遠が必要なシーン以外はほとんどデジカメで撮影するようになりました。「日子の島」に掲載する画像も昨年夏頃以降のものはほとんどすべてデジタルカメラです。

 フィルムカメラのメリットは2つあると考えていて、

(1)一眼レフならば・・・の条件付きですが、特殊なレンズに交換して使用できるので、凝った写真を撮影することができる。
(2)プリントがきれい

 だろうと思うのですが、デジカメデータのプリントについては、最近コニカオンラインラボの100年プリントを利用し始めたのですけれど、わずか130万画素のビデオカメラの静止画モードで撮影したものでさえ、メーカーでプリントしてもらえば十分鑑賞・保存に耐えられる写真が出来上がります。200万画素のデジカメでLサイズプリントならばフィルムカメラと遜色ありません。しかも、すべて自宅からオンラインで注文できて、配達料金300円を払えば宅配までしてくれてDPE屋さんに出向く必要さえないとなれば、理論的な画素数で如何に銀塩フィルムが有利だといっても、多くの人にとっては確かにフィルムの存在価値って無いのかもしれません。

 交換レンズの問題も、今年は20万円を切る一眼レフデジカメが多数登場してくる予定になっています。広く普及するには10万円を切る、つまりフィルム式の一眼レフと同価格帯にならなければならないと思いますが、コンパクトカメラではフィルムとデジタルの価格差がほとんど無いか、あるいは差が縮まって来てますので、一眼レフもすぐに同様の状況になるでしょう。また、上級機では広角側の撮影に有利な35ミリフィルムと同じサイズの受光素子面積を採用した製品も各社出そろうはずです。そうすればデジカメだって広角レンズや光学式の超望遠撮影だって簡単に出来るようになりますし、被写界深度の浅さが許せなくてデジタルに移行できない銀塩派も 35mmサイズの受光素子搭載機の登場で一気にデジタルに移行することが予想されます。

 今回の発表はリコー1社ですが、メディアの移り変わりの激しいムービーの世界では 8mmフィルムから、8mmビデオやVHSのアナログテープへ、そしてデジタル8やミニDVといったデジタルテープ、最新機種では DVD-RAMのようなディスクメディアやメモリカードへと次々にメディアが移り変わってきました。それはより美しく、より手軽に、より高機能に・・・と、あらゆる工業製品がユーザーから要求されてきた弱点の解決を次々に具現化してきた歴史そのものなのですから、静止画カメラの世界でもこういった変化は起きて当然のものだといえます。

 観光地でお年寄りがデジタルカメラを使用している光景を見かけるようになりました。若い世代ではカメラ付き携帯も含めてデジカメがほとんどです。「写るんです」のようなレンズ付きフィルムは安くて日本中どこででも入手でき、落としても無くしてもさほど損害が出ないのでいまだ多く使用されていますが、回収・リユース型のデジタルカメラの販売もすでに始まっています。街の写真館での記念写真も「デジタルカメラ+カラープリンター仕上げ」を選択することが出来るようになり、画質ではフィルムに明らかに劣るものの、旧来のフィルム式よりも安価に写真館で家族写真が撮れるとあって人気だとか。

 もう 35mmフィルムに対して「長い間ありがとう」と言う時期に来ているのかも知れませんね。

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