ふくの日まつりとカモンワーフ
毎年2月9日のふくの日にあわせて、天然トラフグ水揚げ量日本一の彦島南風泊(はえどまり)で「ふくの日まつり」というイベントが開催されます。トラフグ水揚げ日本一の名にかけて、野菜とふくを味噌仕立てで煮込んだふく鍋、ふくの握りずし、一夜干しがなんとタダ! そのほか新鮮な高級海産物が驚くほどの安価で販売されるもので毎年、岡山以遠や長崎・熊本方面からも多数のお客さんが集まりまって、さほど広くない南風泊漁港は身動きも取れないほどの大賑わいとなります。 私も毎年このイベントをいろいろな意味で楽しみにしていました。もちろん、おいしいものが食べられるという実利(?)もありますし、基本的に人込みが好きだからというのもあります。でも、今年はふくの日まつりに足を運びませんでした。で、何をしていたかというとカモンワーフに行ってました。 ここ数年で下関の観光関連施設は驚くほどに整備され、今後も新たな計画が目白押しと聞いています。その整備された施設のひとつが「カモンワーフ」で、口の悪い人に言わせるとシーモール下関(下関駅前の商業施設)の4階(レストラン街)だ・・・とのことですが、私としては商業施設のレストラン街のような食べ物屋さんがたくさん集まっているだけのカモンワーフが別段悪いものだとは思っておりませんで、一箇所でいろいろなお店を楽しめるメリットは滞在時間に制限のある観光客にとっては大きいのではないかと思っています。 いろいろなお店が集まっていると言っても私がカモンワーフに行って利用するお店というのは大体決まっていてその中のひとつにテイクアウトのファーストフードが集まった一角があります。ここには、アイスクリームやケーキ、簡単などんぶり物などの店が何件か並んでいて、それぞれの店のカウンターで好きなものを注文して店内のテーブルや外のテラスで食べます。ちょっと外に出ればふぐの刺身や握りずしなども安くてたくさん売られていますので、テイクアウトの料理だけで不足なら、そいういったものを持ち込んでもいいと思います。私はパック握りずし(パックといっても内容は本格的)とふぐのてんぷらの入ったうどんで昼食・・・ということをよくします。単刀直入に言うと、ここでふくの日まつりのようなものが体験できてしまうんですよね。しかも一年中。 数年前、私はあるところで「来年からふくの日まつりは唐戸かあるかぽ〜とでやったら?」と提案した事があります。そのころはまだカモンワーフも大人気の海響館も無い頃でしたが、そう思ったきっかけはふくの日まつりに発生する大渋滞をなんとかしなければこの渋滞のせいでせっかくの評判をかえって落としてしまうかも・・・という心配心でした。何かのイベントに出かけるときに、渋滞で目的地にたどり着けない苛立ちというのは誰もが経験したことがあると思いますが、ふくの日まつりも、駐車場は比較的余裕を持って用意されているものの会場まで通じる道路が一本しかないということもあってすさまじい渋滞が発生してしまいます。彦島大好き人間(と思われている)私の口からナイスなイベントのアイディアが出てくることを期待していたところが、出てきた言葉は彦島で唯一といってもいい大きなイベントを「島の外でやったら」だったということが相手には思いもよらないことだったようで驚いていましたが、今でもそう思っています。 確かにトラフグがあがっているのは彦島に間違いないことですが、それにちなんだイベントをわざわざ参加者にストレスをかけてまで彦島で行うことはないように思います。地元の人にしてみれば彦島と唐戸ではまったく異なる場所ですが、外部から来られる方にとってはどちらがどちらでもいいことですし、駅からのアクセスも容易で高速道路にも乗りやすく、ついでに寄り道する施設の集まっている唐戸の方が望ましい開催場所であることは明らかです。ましてや、カモンワーフができて一年中ふくの日まつり「もどき」が楽しめるなら南風泊にこだわる理由など、来訪者の側から見れば何も残されていないと思います。もちろん、どうしても本場南風泊でふぐを楽しみたいという方のためのエクスキューズは忘れずに用意しておくべきであることは述べました。 ふぐは下関にとって非常に重要な観光資源です。これまで、遠方からお客様が来られてもなかなか、金銭的、あるいはロケーション的に気軽にふぐを楽しむことができませんでしたが、今は違います。観光資源の開発に多くの費用と労力がつぎ込まれ、そのつぎ込み方に賛否両論はあっても結果として「下関に行けばふぐが気軽に食べられる」という街を作ることには成功しつつある思います。でも、それが結局南風泊の存在価値を低下させ、価格優先のトラフグ以外の安価なふぐが大量に提供され始めたことによって「ふぐといえば下関でさえ高級魚」というブランドイメージも(少なくとも地元では)失いつつあるように感じています。 多くの人に安価に地の特産品を提供する。それはすばらしいことですが、それとふぐにおける彦島のアドバンテージをあけわたすことを天秤にかけてしまったようです。これからのふくの日まつりが果たしてどうなっていくのか、関係者の皆様がまつりのあるべき発展の方向を見極め今後も下関を代表するイベントとして成長を続けることを祈っています。 |