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■訃報■

 作者の五彩きょうこさんが亡くなられました。

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title.gif (1874 バイト)

  山口 和(なごみ)さんの歩く彦島をご紹介します。

山口和さんって・・・・

 あおば出版「さくら増刊・嫁VS姑 Vol.6」に掲載された五彩きょうこさんのマンガ「里帰り」の主人公です。5年前に埼玉県から山口県下関市彦島にお嫁にきた設定となっており、なごみさんが11月19日から29日まで里帰りしていた間の心の中の移ろいを主題にしています。


荒田港フェリー乗り場

 ここはオープニングでなごみさんが「ベーッ」とやっていた荒田港フェリー乗り場です。福岡県北九州市の日明(ひあがり)港行きのカーフェリー(関門海峡フェリー)や夏場には関門海峡のクルージング船などが出航します。
 ここからは関東方面への船はありませんが、関門海峡フェリーの到着港日明はJR小倉駅にほど近い位置にあります。下関の人は通常新幹線に小倉駅から乗車しますのでなごみさんもここからフェリーで対岸に渡って新幹線で里帰りしたのかもしれませんね。
 ちなみに、なごみさんが「ベーッ」ってやってたのは画面右側のトラックの後ろあたりです。
 なごみさんは姑さんに対する不満が山盛り。ある日、ふと思い立ってここからフェリーで埼玉の実家に息子のタケル君を連れて里帰りします。久しぶりに戻った実家はなごみさんが体中の緊張を解いて自由になれる懐かしい家でした。
 でも・・・実の母親におなかの中のどろどろを聞いてもらって憂さ晴らししたつもりだったのに、母親が姑さんの悪口を言ったのを聞くとなんだか心に引っかかるものがあるのでした。


なごみさんが思い出す彦島の風景その1

 彦島は「里帰り」にもある通り、海と坂道の島です。ただ、海に囲まれているとは言っても古くから漁業や造船業が発達していましたので海岸線はほとんどが写真のようなコンクリートの護岸になっています。山がいきなり海に落ち込む地形で平地がほとんどないので海岸沿いには窓の下はすぐに海・・・という感じで家や事務所などがならんでいます。
 母親に会って姑さんの悪口をたくさん言いたかったはずなのに、逆に母親の口から姑さんの悪口が出るとなんだか自分の心が傷つけられたような妙な気持ちになってしまいます。

なごみさんが思い出す彦島の風景 その2

 ここは小戸(おど)海峡と呼ばれる瀬戸に面した小さな漁港です。小戸海峡はかつては日本有数の良い漁場で海を見下ろす高台には高級料亭がならんでいました。現在は残念ながら埋め立てによる開発が進み、小戸は良い漁場とは言えず、近海で漁を行う漁船がつながれる漁港となっています。
 本当の私の家はここ。
 ここのはずなのに、なんだか、心の中に浮かぶ私の家、私の家族の居場所、自分の今の居場所は懐かしいはずのこの家ではなくて、彦島・・・。5年前、24歳の夏にお嫁に行った彦島の風景、坂や海に囲まれて、街行く人さえよそよそしく見えていたそんな彦島の風景でした。

向井
     
なごみさんの歩いた町並み

 彦島が海に囲まれた坂の島だということがよくわかるシーンですね。埼玉育ちのなごみさんにはとても見慣れない風景だったそうです。ここは彦島向井町。彦島は高台に住宅地、狭い平地に商店や事務所、工場などが並んでいて、その周りを海が囲み、対岸には北九州市の工業地帯が見えるのでこのような風景になります。なごみさんもこの坂道を商店街に向かって歩いているのでしょうね。
 でも、ふと気が付くと自分が暮らしていた頃とはなんだか変わってしまったような実家の家の中・・・。
 隣にはいつのまにか見知らぬ人が越してきて、小さい頃遊んだ空き地は駐車場やマンションに。母親とよく買い物に行った小さなお肉屋さんは店をたたんで・・・。見慣れたはずの風景なのに自分を残して街が変わってしまったようなそんな気持ち・・・。

なごみさんが買い物している商店街

 埼玉の実家に戻ったなごみさんが、彦島で安く買える新鮮な魚とはあまりに見劣りのする近所のスーパーで切り身で売られているパック品のサバを見て、「魚は東屋さんやねぇ〜」とつぶやいた東屋さんはこのあたりにあるのかもしれませんね。ちなみに、宅急便の看板の右側が野菜&果物屋さん、看板の左側は魚屋さんです。下関漁港で競られたばかりの新鮮な魚介類が店頭に並んでいます。今でもパック品ではなく、「里帰り」で描かれたような箱の中に魚がそのまま並んで手書きの値札が立ててあります。
 地元に残って結婚したなごみさんの友人が訪ねてきました。
 帰り際に「あんた、なまったな」と言われ、自然と彦島の言葉が口から出ている自分に気づき、変わったのは決して街の風景ばかりではなく、街も、友人も、そして自分さえもそれぞれに変わっていることに気がつきます。

田の首

なごみさんが思い出す彦島の風景 その3

 山があって、海があってその間の狭い隙間を分け合うように住宅や事務所が並んでいます。島じゅうのどこにいても潮の香りがただよってきます。埼玉からはじめてこの島に来た時はさぞかし「臭かった」ことでしょうね。
 でも、埼玉の実家からだんだんと生活の中心が彦島に移りつつあるなごみさんは、この潮の香りがふるさとの香りに感じ始めているかもしれませんね。
 久しぶりに母親と一緒にお風呂に入りました。
 自分の母親もこの地にお嫁にきて、歳月がたつうちに、「どっちを『自分の家だなぁ』と感じる比重」が新しい家庭に移っていった話を聞きます。
 自分も新しい彦島での生活に比重が移っていくことを自覚して、なごみさんは迎えに来た旦那と一緒に埼玉の家を後に新しいこの彦島の家にまた戻っていきます。
 夜もふけた彦島の家では姑さんが一人、みんなの食事の仕度をして待っていてくれたのでした。

 「遅かったやん まったく はよう はいらんなぁっ」

海士郷 武者田

彦島って 海と坂ばっかりで

向井 迫

観光名所も遊ぶところもないけれど

西山海水浴場 江ノ浦

なんだか心地よいところなんですよね

なごみさんまっぷ
なごみさんまっぷ

アクセス・・・すべてJR下関駅より
思い出の風景その1・・・サンデン交通彦島営業所行き「堀越」下車
思い出の風景その2・・・サンデン交通海士郷行き「海士郷(あまのごう)」下車
古い町並み・・・サンデン交通彦島営業所行き「桟橋通り」下車
市場・・・サンデン交通彦島営業所行き「杉田」下車
フェリー乗り場・・・バス路線がありません。島内でタクシーに乗車してください
坂のある風景・・・サンデン交通荒田経由「変電所前」下車、サンデン交通山中経由または田の首・中部(なかべ)経由「向井町民館前」下車
海岸・・・サンデン交通山中経由または田の首・中部(なかべ)経由「田の首」下車



このサイトでは五彩きょうこさんとあおば出版の特別のご厚意で
「里帰り」をオンラインでお読みいただけます。

里帰り (pdf : 2.7MB)

 

 


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