■■■■ワカメの養殖(市報「潮風」1996年3月1日号より)
海原の一隻の漁船が航跡を残しながら疾走していきます。ここは南風泊漁港の沖合。数隻の漁船と無数のウキが点在しているのが分かりますか。この海域、実はワカメの養殖場なのです。
今日、下関を代表する海の幸といえば、フク、ウニ、かまぼこなどが挙げられますが、太古の下関においてワカメは特別な存在でした。下関の古名の「赤間関」、その赤間がワカメに由来するからです。
文献上、「赤間」が最初に登場するのは『旧事本記』。そこには大和朝廷の大豪族の物部氏のひとつ、赤間物部についての記述があります。公庫・民俗学者の国分直一氏によると、この赤間物部はワカメを扱っていた漁村の部民をさすそうです。ワカメは方言で「アカメ」と発音され、赤間へと変化していったというのです。
関門海峡の両岸ではワカメの祭事・和布刈神事が今も伝承されています。古代からワカメは、下関に住む人々にとって、神聖な物だったようです。
そう思うと、何気なく口にしているワカメが、神様からの贈り物に見えてきます。ワカメを肴に、海の神に乾杯というのも一興ではないでしょうか。
(「潮風」96/3/1号から許可を得て転載)
上の写真は市報「潮風」からの転載ですが、2005年11月に(旧)彦島有料道路から撮影した養殖場の様子です。対岸は北九州市の工業地帯で、新日本製鐵などが出資する株式会社エヌエスウインドパワーの響灘地区風力発電施設も見えます。2003年3月に運転を開始したこの風力発電施設は北九州市が保有する響灘緑地(延長2,500m、幅40m)に風力発電機を10基(1,500kW/基)を設置したものだそうです。空気の澄んだ日には風車が豪快に回転しているのが見えます。
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