きぬかけ岩

 今から、800年くらい前、壇ノ浦(だんのうら)のたたかいに敗れた平家の、ある武将(ぶしょう)がここまで逃げてきましたが、体中にけがをしていたため、もう自分は死んでしまうと思い、お嫁さんと手をつないで海へ飛び込みました。

 彦島のまわりの海の流れは、今よりもずいぶん速かったので、その武将(ぶしょう)はそのまま海の底へと消えていきましたが、お嫁さんは漁師に助けられました。

 お嫁さんは漁師の家で、着る物や食べ物をもらって、大切にもてなされましたが、毎日、海沿いの大きな岩にあがって、武将(ぶしょう)の名前を呼び続けました。お嫁さんはは次第にやせてしまって、体も弱っていきました。

 ある雨風のひどい日でした。ずぶぬれになりながら、いつものようにこの岩にやってきた武将(ぶしょう)のお嫁さんは、しばらくじっと海を見ていましたが、やがて岩に上に立ち上がり、着物を脱いで、岩にかけると手を合わせたまま、海に飛び込んで死んでしまいました。

 それから、この岩のことを「きぬかけ岩」というようになりました。

 この岩は、今も彦島大橋の下あたりにあります。

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