■■■■彦島の産業・・・ふく(ふぐ・河豚)

フクの歴史

下関ではフグのことを幸福の「フク」と呼ぶ

 下関では、昔からフグのことを「フク」と呼んでいます。フクは幸福につながるし、フグでは不遇に通じるからです。日本で最初の分類体の漢和辞書といわれる「倭名類聚鈔(わみょうるいじゅうしょう)」にも「布久」と書かれていて、昔はフクと濁らずに呼んでいたと伺えます。
 今では東京なまりのフグの方が一般的になり、学名もフグとされていますが、下関では今でも幸福を呼ぶ魚として「フク」と呼んでいるのです。

2000年以上も前から培われてきたフク食文化

 縄文時代、人は竪穴式住居に住み、生きるための糧は、漁労と狩猟採集でまかなっていました。当時の食生活を貝塚から知ることが出来ますが、貝塚には貝だけでなく魚の骨や歯なども含まれています。
 下関では安岡の潮待貝塚で2000年以上も前のものと推測されるたくさんのフクの骨や歯が発見されています。
 言うまでもなく、フクは猛毒を持っています。古代の人々は危険と知りつつ、あまりのおいしさにひかれて、この魚を食べ続けたのでしょう。食の開拓者達の勇気が、下関のフク食文化の始まりなのです。

フクは悔いたし、命は惜しし

 豊臣秀吉の朝鮮出兵の折、関門海峡を渡るため多くの兵士が下関に滞在しました。この時、下関でたくさん取れていたフクを素人料理で食べたため、集団食中毒を起こしました。それを聞いた秀吉は、日本最初のフク食禁止令を発したのです。
 フク食禁止令を解いたのは伊藤博文でした。明治21年、日新講和条約締結のために春帆楼を訪問した際、しけのため魚が全く捕れなかったので、女将が罰を覚悟でフク料理を出したところ、あまりのおいしさに山口県でだけフクを食べられるようにしたのです。
 このようにして、下関のフク食文化は定着し、「下関のフク」として結実しています。

フクの生産

フクといえば下関

 下関画幅の本格的な産地としてその名をはせるようになるのは、昭和40年代前半のことです。日韓漁業協定締結以後、東シナ海、黄海でのフク漁獲量が飛躍的に増加したためです。漁を終えたはえ縄漁船団は、本州の西の端である下関・南風泊港に入港して荷を下ろしました。この地理的優位性が下関を一大集散地にします。
 さらに、内臓物テトロドトキシンという猛毒を持つフクは、加工技術に熟練を要しました。フク食に長い歴史を持つ下関には、加工技術と熟練したふぐ処理師の集積が進んでいたので、フクはほとんどが下関に持ち込まれました。

南風泊市場は真夜中に目覚める

 真夜中。人々がまだ深い眠りの中にある頃、南風泊市場は眠りから覚めます。全国から集荷されたフクが活魚水槽から水揚げされます。
 下関は、トラフクの水揚げ量日本一を誇っています。平成10年度で約2900トン、日本のフクの80%が南風泊市場でセリにかけられます。
 下関のフクの競りは「ふくろ競り」と言われる独特なもので、黒い袋の中で何本の指を握るかで値段が決められます。「エカ、エカ、エカ(用意はいいか、場を締めてもいいかの意味)」という、競り人の力強い声が場内に響き、中卸人たちが、次々とセリ人の袋に手を突っ込んでいきます。一つのとろ箱にかけられる時間はたった数十秒。一瞬の判断力と集中力がものをいう真剣勝負によって全国のフクの値段が決められます。

養殖フクの台頭

 年を追うごとに減少する天然物のフク。市場の原理に従えば価格の上昇もやむを得ませんが、天然物にかわって質の良い養殖フクの生産が急増し、安定的に確保できるようになりました。
 フクが安く私たちの口にはいるようになることは大変望ましいことです。下関に住む私たちの利点は、最高級の天然物のフクから、養殖物の比較的安価な物まで、いろいろ食べられることでしょう。さらに私たちにとって身近な食材になりつつあります。

フクの料理

技術で食う、これぞ究極のグルメ

 えもいわれぬ淡泊な味で、かみしめれば深い味わいが口の中に広がるフク。フクは内臓にテトロドトキシンという猛毒を持っているため、取り扱うには各都道府県で認可した資格が必要です。素人は身欠き(有毒部位をきれいに取り除いたもの)を手に入れて食材にすれば安全です。
 本場下関に住むからにはフクの持つ独特のうまさをもっと身近の物として堪能したいもの。お店で一流のフクを食べるのも、もちろん最高の幸せですが、朝市で身欠きフクを買ってきて、家庭でフク料理を楽しむことも下関だから出来る贅沢です。
 フク料理といえば、フク刺しとフクチリでしょう。フルコースは前菜として煮こごり、フク刺し、フク唐揚げ、フクチリ、フク雑炊、フク茶碗蒸しにひれ酒が一般的ですが、これに白子が加わればいっそう華やかになります。

前菜

 前菜にも様々ありますが代表的なのが「煮こごり」です。フクの皮はゼラチン質を多く含み、加熱して煮込むとうまみやゼラチン成分が煮汁に出てきます。これにしょうゆ、みりんなどを加え、型に入れて冷やし固めます。ゼラチン質のつるっとしたのどごしと皮のこりこりとした歯触りが楽しめます。
 1月末から3月には白子の塩焼きも絶品です。白子を水洗いし、粘膜と血を取り、塩をふってこんがりと焼きます。白子をフク最大の妙味という人もたくさんいます。

フク刺し

 関東では「ふぐ刺し」と呼ばれていますが、関西では「てっさ」と呼ばれます。関西ではフクのことを別名「てっぽう」といい、てっぽうの刺身という意味なのです。
 フク刺しには、締めてから丸1日寝かせたものを使います。フクのみを盛る皿の絵が透けるくらい薄くひくと、程良い食感が楽しめます。ポン酢とワケギと紅葉おろしを付けて食べます。

フク唐揚げ

 しょうゆと酒を合わせた下地に30分程度つけ込み、片栗粉をまぶしてこんがりと揚げます。フクはさらにうまみを凝縮させて、こくが生まれます。

ひれ酒

 トラフクの尾ひれをよく洗って干し、火であぶったものを日本酒の熱燗に入れます。ふたをして数分おくとひれの成分が溶けだし、日本酒は琥珀色を帯びてきます。香ばしい香りと味わいを楽しみます。

フクチリ・フク雑炊

 フクのアラを使います。昆布で出しを取り、煮立ってから骨を入れ十分に出します。アクを丹念にすくい取ってから、アラを入れます。煮立ったら株、春菊、白菜、椎茸、豆腐などを入れ、煮すぎないうちに食べます。
 様々な素材からにじみ出るまろやかで深い味わいを大勢で囲むちり鍋は、冬の醍醐味です。ポン酢、ワケギ、紅葉おろしで食べます。
 フクと野菜のうまみが十分に煮出したフクチリのだしで今度は雑炊を作ります。残った具を取り出し、塩や薄口しょうゆを加え、水洗いしたご飯を入れて一煮立ちさせます。沸騰したら火を止めて溶き卵を入れ、火を止めてワケギを散らしてできあがりです。

下関市広報誌「みらい」1999年10月15日号より転載
このサイトは下関市発行物の非営利目的における転載の許可を得ています


  

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