キーワード:読書 海軍 コメントの種類 :雑談
パスワード
日付が3月に変わってしまったのとある程度期間が経過したので、
たまった本の紹介を新しいスレッドで紹介しましょう。
どうせまた海軍ネタだろうと思ったあなたは…大正解(笑)
でも今回は教科書が教えない近代日本史をドンと紹介する、
二人の提督にまつわるお話2本立てでスタート!
『東郷平八郎 元帥の晩年』
佐藤国雄・著、朝日新聞社、1990年
今や歴史教科書ですぐに名前が出る日本海海戦の立役者ですが、
その神格化は大正年間まで全然なかったどころか、
とある商品名をもじって「東郷バカネ」という地口もあったほど、
日本海海戦の圧勝後もさほど英雄視されたわけではありません。
(この辺は阿川弘之『米内光正』『井上成美』の冒頭部分をご覧あれ)
そんな東郷元帥がなぜ祭り上げられるようになったのか、
そしてその政治的な影響がいかなるものだったかについては、
教科書で決して触れられることがありません。
本書は世間に知られていなかったその辺の史実を改めて掘り起こし、
日本海海戦以後の「空白」を埋めた朝日新聞の連載記事を、
まとめて単行本化したものです。
東宮御学問所総裁として皇太子(後の昭和天皇)教育に専念した頃はともかく、
昭和に年号が変わってからの言動は「艦隊派」の取り巻きに担ぎ出された結果、
生涯現役扱いとはいえ軍縮を望む当時の世論に逆行することもあり、
さらに東郷元帥の言動が清掃の道具として利用される事態に発展した経緯を、
膨大な資料で検証しひたすら冷徹な筆致で描き出します。
ちなみに東郷神社建立についてはさすがに当人反対だった由、
その点だけは晩年まで正気を保っていたようですな。
『小澤治三郎 果断・寡黙・有情の提督』
宮野澄・著、PHP出版社、1999年(文庫版)
*原著は1994年に祥伝社より刊行
こちらは「艦隊派」のせいで進言を退けられるなど散々な目に遭い、
せっかくひねり出した名案も年功序列のせいで実施させてもらえず、
それでも黙々と海軍に奉公して敗戦まで勤め上げ、
その後は研究関連を除き表立った活動を控えていた有名な提督のお話。
海戦史を少々ご存知の方ならばマリアナ沖海戦のアウトレンジ戦術や、
ハルゼー提督を見事に引っ掛けた囮作戦を思い出すでしょうが、
太平洋戦争の開戦初期に行われたマレーおよびインドネシア方面作戦も、
この小澤提督の存在なしには語れなかったそうです。
とにかく晩年まで同僚や部下はおろか家族に対しても寡黙、
彼の次女と結婚し彼と同居した作家の大穂利武との会話量は、
大穂氏いわく「10年で原稿用紙10枚あるかないか」!?
そんな小澤提督の苦労話やそこから生まれた柔軟な発想を読むうち、
上記の東郷元帥と正反対とまでは言わぬまでもかなり異なっていたことや、
「過度の」年功序列がもたらす弊害を知ることになります。
…小澤提督に弟子入りしたかったなぁ。
|