[1] | 今市屋平右衛門の子孫 今市屋藤四郎さんからのコメント(2005年03月28日 21時40分00秒 ) | パスワード |
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意訳ですが、
そのうちに十月二十三日になり、明日矢合わせをして開戦することに決まった。その前夜、伊豆や駿河の百姓たちが明日の戦に巻き込まれまいとあるものは野に入り、あるものは山に隠れ、あるものは船に乗って海や川に浮かんで戦の嵐が過ぎるのを静かに待とうとしたが、その各所で炊事の火を起こしたため、平家の側から見ると源氏の大軍が進攻の準備をしているように見えた。
「野も山も、海までもすべて源氏の軍勢でおおわれているではないか。どうしよう。」
その夜半、富士川近くの沼沢で羽を休めていた水鳥が何に驚いたのか、一羽が声を立てて飛び立つと、あたりにとどまっていた鳥すべてがいっせいに羽音を立てて飛び立った。その音たるや、これが水鳥が立てる音かと思うくらいに轟然としたもので、それが水面や山影に反響してさらに大きな音となった。平家の侍たちは、鳥の羽音で起こされた。大風が吹いたか雷がなったかというような大きな音が夜陰の中を渦を巻くように近付いてくる。何の音だろう。「敵襲じゃ。」全員がいっせいに後方へ走りはじめたために大混乱が起こった。弓を取るものは矢をしらず、矢を取るものは弓をしらず、他人の馬には自分が乗り、自分の馬を他人に乗られる。或る者はつないだる馬に乗って杭を際限なくめぐる。近くの宿所で宴会などしていた、少し身分の高い連中も、その建物の中でどっと押し寄せてくる怒涛のような人波と、その地響きと声とを聞いた。彼らも混乱に巻き込まれた。転んだりして一瞬でも逃げ遅れたものは後ろの人間に頭を踏み割られ、あるいは腰を踏み折られて命を落とす者も少なくなかった。
翌朝、頼朝は予定通り全軍を集め富士川の河原に押し寄せて、天にも響き地をも揺るがすほどのときの声を三回作った。ところが、平家の方では音一つしない。人を出して様子を見させると、「みな落ちていったようでございます。」との報告が入った。敵が忘れていった鎧を問ってくる者もあり、あるいは敵が捨てていった陣幕を取ってくるものもある。
「敵の陣には蝿一匹飛んでおりませぬ。」と申した。頼朝は、馬を下り、兜を脱ぎ、手を洗い、嗽をして帝都のほうを拝みながら、「これはまったく頼朝個人の功績によるものではない。八幡大菩薩のお助けであろう。」と話した。ここで敗走の平家軍を追撃する事ができたが、背後もやはり不安だと言うので、家臣に駿河、遠江両国の統治を委任し、相模国へとお帰りになった。
小学館の古典文学全集には、(新・旧共に)現代語訳も載っています。
お近くの図書館にも有ると思います。
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