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 投稿番号:100033 投稿日:2000年10月08日 21時41分22秒  パスワード
 お名前:服部 明子
西行法師(佐藤義清)の雑談
キーワード:西行法師・佐藤義清
コメントの種類 :人物  パスワード

西行法師について花鳥風月を愛して漂泊の旅に出た歌人のような印象がありますが
実は出身が出身だけに(北面の武士ですから)
心の中はライバル意識で一杯だったのではないか、と思うのです。

[1]服部 明子さんからのコメント(2000年10月08日 21時45分56秒 )
  

本人によりコメントは削除されました。 2000年10月08日 21時47分55秒
[2]服部 明子さんからのコメント(2000年10月08日 21時47分35秒 ) パスワード
  

1999年の日付は不明の中日新聞の記事があります。
投稿者は作家の栗田勇氏です。(くりた・いさむ)


タイトル「西行の恋」
副題「@一夜@の重さに生涯を賭け永遠と死の相の下に生きる」

以下はその内容。
少しずつ写していきます。
[3]服部 明子さんからのコメント(2000年10月08日 21時52分38秒 ) パスワード
  

栗田さんのお説は西行法師に好意的です。

私は「なかなか本心は藤原秀郷の子孫らしい武士の激しさを持った男で
出家もその激しさの勢いだったのだろう」と思っています。

では文学的な西行法師について要約してみます。
[4]服部 明子さんからのコメント(2000年10月08日 21時59分46秒 ) パスワード
  

西行法師といえば、「新古今集」を代表する、出家・遁世・無常を歌った歌人として
知られている。

ところが西行は実は、謎の人物、それも自覚的な、複雑な思想家であることを知った。

彼は兵衛尉佐藤義清(のりきよ)、鳥羽法皇近く仕えた下北面の武士であった。
(げほくめんの武士)

それが23歳で
「家富み、年若く、心愁い無きも、遂に以て遁世せり。人これを歎美せるなり」
という事件が起こる。

理由は「俗時より心を仏道に入れ」という、至極一般的なことしか挙げられていない。


当然、疑惑が起こる。
[5]服部 明子さんからのコメント(2000年10月08日 22時19分17秒 ) パスワード
  

「源平盛衰記」は、端的にこれに答えて言い切っている。

曰く、
「さても西行発心の起を尋ぬれば、源は恋ゆゑとぞ承る。
申すも恐れある上ろう女房を思ひ懸けまゐらせたりけるを@阿漕の湘ぞ@と
言ふ仰せ」
があった。

つまり、思いもかけぬ恋の一夜を過ごしたが、
ただ1度だけと縁を切られたということである。

・・・知らざりき 雲ゐの余所に見し月の かげをたもとに 宿すべしとは・・・


この美談とも伝えられたスキャンダルは当時の社交界にたちまち流布し
その決着をつけるべく23で出家遁世に踏み切った
と私(栗田勇さん)は考える。

その決断、そして何よりもただ一夜の恋の重さに生涯を賭けたことが、
「人これを歎美せるなり」
という衝撃を与えたのである。
[6]服部 明子さんからのコメント(2000年10月08日 22時39分03秒 ) パスワード
  

日本の詩歌は、山本健吉氏が指摘しているように
古代からの相聞歌、「万葉集」を始め、「もののあはれ」「いろごのみ」などと広く、
生命の讃歌ともいうべき「霊的な威力」を歌い続けてきた。

日本の古代での恋は「いろごのみ」といわれる性愛の充足が、美徳であったはずである。

ところが西行のただ一夜の恋と失恋、そしてそれを日常的に受け流さず、
いわば形而上学的というか、一挙に絶対的で唯一の愛にまで純化した点が、
実に画期的であった。
[7]服部 明子さんからのコメント(2000年10月08日 23時30分40秒 ) パスワード
  

もっとも西行は「山家集」に収められたものだけでも
「恋110首」・「月」に寄する恋(37首)・「恋」(59首)をはじめ、
300首もの恋歌を詠んでいる。

日本古来の恋の風土をよく知っていた。

しかし、ほかのだれも歌わなかった恋の歌がある。

それは「月」と「死」のイメージが深く一体化した恋の歌である。


そのほかの恋歌は、いわば「源氏物語」風の典雅な出逢い・別れ・夢・四季によって
変化する連作である。
[8]服部 明子さんからのコメント(2000年10月08日 23時48分27秒 ) パスワード
  

ところが、「月」と題された616番から先は、詞書きもない37首が続く。

「月」は彼にとって特別な恋の対象であった。

恋人の面影を月に託すことは、古来行なわれてきたが、一味違う執念が見られる。

・・・よしさらば 涙の池に袖ふれて 心のままに月をやどさん・・・

・・・世々経とも 忘れがたみの思ひ出は たもとに月のやどるばかりぞ・・・


月は絶対的に手の届かぬ存在であり、ただわが涙の滴に影を落とすばかりである。

ここには仏教的思想において、
「月」を「真如の月」=「宇宙的真実・実在」とする教養がにじみ出している。


それをどうして同化できるか?


・・・逢ふまでの 命もがなと 思ひしは 悔しかりける我心かな・・・

・・・わりなしな 袖になげきの満つま々に 命をのみも厭ふ心は・・・


死をいたむ和歌は多い。
しかし「恋」の歌の中で死をこれほど身近に歌ったのは西行だけと言っていい。


彼は、その1度の恋を一度とすることによって、初めて永遠と死の相の下に恋を生きたのであった。

(了)
[9]服部 明子さんからのコメント(2000年11月09日 13時52分37秒 ) パスワード
  

木曾と申す武者
死に侍りけりな

木曾人は 海のいかりをしずめかね
死出の山にも入りにけるかな
[10]albamaximaさんからのコメント(2003年08月26日 18時08分15秒 ) パスワード
  

今まであんまりピンと来なかった西行さんの気持ち、服部さまの文章
を読んで、じ〜ん、ときました。

今年の4月に西行さんを偲ぶ後席に出席する機会がありました。
床の間には桜の花が活けられ、桜と鮎のお軸がかかってありました。

「みよしの」という香木の一柱聞きでそれをみんなで回して聞くのを
3周するので、1回目、2回目、3回目、と香木の香りが薄く、繊細
になっていくのです。

吉野山の下千本から奥千本まで花を愛でながら逍遥していくにつれ、
花が満開〜五分咲き〜三分咲き、と変化していく様子を、薫りが薄く
なっていくことから、想像していくという趣向でした。

証歌は

花見にとむれつつ人のくるのみぞ
あたら桜のとがにはありける

青葉さへ見れば心のとまるかな
散りにし花の名残と思えば

もう一度、西行さんの歌を読んでみようと思います。

ありがとうございました。
[11]服部 明子さんからのコメント(2003年08月27日 03時04分54秒 ) パスワード
  

ほ〜
優雅ですねえ〜

日本の高尚な文化なんですねえ〜
ゆたかだな〜っと感心してしまいます。
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