日子の島別館 「高千穂」 第一部
96年12月10日
数日前にふと思い立ち、宮崎県は日向市で焼き肉屋さんを経営している友人を訪ねることにしました。勤め先に休務届けを提出し、翌朝発の南宮崎行き特急「富士」の乗車券を購入、乗車券は周遊券が得ということなのでそれを購入しました。
96年12月11日
天気は良さそうです。7:14下関発の「富士」に乗車。平日ということで、乗客はそう多くありません。無人の車両もあるようです。寝台使用時間はすでに終了しているので立席特急券で乗車し、とりあえずは大分まで連結されているロビーカーのソファーに腰を下ろしました。時刻表を見ながら今後の行程を考えます(私は結構行き当たりばったりで出かける方)。五ヶ瀬にも友人がいたので、寄ってみたかったのですが、彼と電話で話したところによると、高千穂からの足がない様子。高千穂からバスが出ているらしいのですが、2〜3時間に1本だそうで、運良く五ヶ瀬にたどり着けたとしても絶対にその日のうちに日向市に着かない・・・(涙)。私は観光地化されていない田舎の町を訪ねるのが大好きなのですが、今回はどうやらお預けのようです。
高千穂峡は「富士」の停車駅延岡から54km。延岡駅から出ている高千穂鉄道に乗ればおよそ1時間半で着きます。神代の伝説が生きているその町は、山容の秀、渓谷の美、千木をいただく農家の茅屋根、かるいをせおった村人の風習、その牧歌的な雰囲気が旅情を誘う町で紅葉にはすでに時期は遅いものの是非とも1度訪れてみたい町でした。
そこで、延岡で途中下車することにしました。時刻表で高千穂行きの列車の行き帰りの時刻を確認すると、高千穂での滞在時間は数時間しかとれないものの、焼き肉屋の主人と約束した時間までには日向市に着けそうでした。そうこうしているうちに列車は別府を発車し、左手に別府湾を見ながら(左写真)、役目を終えた寝台列車独特ののんびりとしたリズムで日豊本線を下っていきます。東京から乗車してくる人はともかく、九州に入ってからの区間利用はたいていの人は特急「にちりん」を使うようですが、私は、夜を徹して走り続け、大部分の乗客を目的地に送り届けたあとのこの余韻がとっても好きです。
大分をすぎると日豊線は単線となり、離合のための停車が多くなります。民家も何もない山の中に停車し、上り特急列車と交換します。
10日より普通列車乗り放題の「青春18キップ」の適用期間になっていて、今回の宮崎行きも普通列車でのんびりと・・・というのも考えたのですが、この日豊線、難関は佐伯−延岡間で本線にも関わらず普通列車が1日に5本しかありません。7:49佐伯発の列車に乗れなければ、次はいきなり14:30発となってしまいます。7:49の列車に当日の朝下関を出て乗車することは接続上不可能ですし、14:30発では高千穂へ立ち寄ることができません。この間のみ別にキップを購入して特急を利用するという手もあるのですが、そうするにしても高千穂での滞在時間を確保するためには朝5時過ぎには家を出なければならず、今回は行程よりも中身を重視して特急列車での往復となりました。
けれども、山の中を走る区間の多い日豊本線には私のような非観光地の田舎が大好きな人間にとって興味深い駅が多く、次回は普通列車に乗ることを目的としてこの線を走ってみようと思っています。
「富士」は定刻通り12:04延岡に到着しました。隣のホームには高千穂行きの2両編成のディーゼルカーがガラガラとエンジン音を響かせながら発車時刻を待っていました。
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